平成29年度調査研究報告

 

1、はじめに

 平成29年度は、平成29531日に栃木県粟野森林組合管内の民有林を粟野森林組合代表理事副組合長神山義一氏の案内で、杉浦常務理事が調査した。

 

2、調査目的

 一向に林業経営に明るい兆しが見えない中で、林業経営に懸命に取り組んでいる森林組合と林家の実態を把握するためである。

 

3、活動状況

(1)粟野森林組合の指導

 粟野森林組合は栃木県鹿沼市下粕尾に所在し、代表理事組合長福田七右衛門氏ほか13名の理事で構成している。

 粟野森林組合の組合員数は、正組合員637名、準組合員19名計656名である。森林面積は16,416ha(内組合員面積11,748ha72%)である。主な事業は、立木の伐採・販売、各種補助事業の申請、森林経営計画、森林保険加入、作業道開設、山行苗木及び各種林業資材販売である。

 平成28年度取扱実績を示すと次表のとおりである。

項目

数量

金額   (千円)

一般用材

24,405

229,907

除間伐他

444

181,884

その他購買等

142,247

 

554,038

 森林組合は、組合員の管理経営の指導のほか、平成26年に発生した雪害木(冠雪害)の処理及びニホンシカによる食害防除対策の指導に当っている。

 粟野森林組合は、栃木県内では管理規模、諸作業の実績ともに上位にあると見なされる。

 

(2)神山家の林業経営の概要

 神山家の経営山林面積は、所有林約100ha、経営受託山林約83ha

である。その内訳は人工林約173ha(スギ林約104ha、ヒノキ林約69ha)、天然林約10haである。スギ、ヒノキの人工林は優良大径材の生産を目標とし、11年生から枝下2mの裾枝払いを行い、5齢級までに3年に1回の頻度で7mまで枝打ちを繰り返し行っている。

 路網は林道1,000m、作業道8,000mを開設している。フォワーダ1台、グラップル付きバックホウ1台を導入し、材価が低迷する今日でも、意欲的に利用間伐と小面積皆伐を実施している。

 一方、ニホンシカの食害対策として、神山氏は鳥獣管理士準一級の資格を取得し、狩猟による生息密度の適正化を図っている。

 

(3)(有)高見林業の林業経営の概要

 有限会社高見林業は、栃木県鹿沼市上粕尾に所在し、代表取締役は斉藤正氏で、経営面積は17名の所有者が有する502.27haである。

 自疆不息(自ら努めそれを止めない)を経営理念とし、基本方針は山林を経営の基本とし育林に勉め、健康で収益性の高い山を作る。研究に努め、事業の効率化を図る。事業の反省点は必ず計画に反映させる。論理と誠実、責任感を持って地域に愛され、尊敬される会社になる、としてある。

スギ、ヒノキの人工林は枝打ち・間伐を集約的に実施し、長伐期優良大径材生産を目的とする。従って伐期は80100年とし、間伐・択伐施業を実施する。広葉樹林は当面は、自然の推移を見守りながら保存する。

高見林業は森林認証を取得するだけでなく、宇都宮大学、東京農業大学及び栃木県林業センター等の研究施設への研究フィールド提供を行い互いに技術を高め、人的交流を進めている。

その他、地元小学校(緑の少年団)通じ、緑の大切さを次代を担う子供たちに教えている。また、一般市民や建築学科や建築デザイン学科の学生に森林の体験フィールドを提供し、木材の需要拡大に努めている。その一つが日光地区木材流通研究会を設立し、家を建てる人のために必要な分だけ木を伐採し、森林の所有者と研究会会員の仲間すなわち林業・製材・材木業者・設計事務所・工務店などが協力し建主の希望に添った家づくりをしている。研究会員は林業家4名、原木市場1名、製材業者2名、設計業者1名の計8名である。川上から川下に至る異業種が連携して地元の木材需要拡大をめざしている。

 

4、おわりに

 今回は林地及び立木価の動向調査は、林地及び立木の売買が例年通り少ないので行わなかった。

 私有林の経営は相変わらず厳しい。民有林経営者は木質バイオマスなどの需要拡大、特用林産物の活用を進めながら、当分は耐えるしかないのだろうか、林業、林産業関係者はこの実状を農林水産省以外の各省庁にも訴え、実状を理解の上、国土保全、環境維持、そして緑資源の活用を総合的見地から対策を検討するようにお願いする。

 


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